Road to Overseas

あいつが会いに来た夜

これは事実です。
幽霊なんて人間が面白くつくったもんだ

そうかもしれない

科学的に照明されるのなら幽霊なんて存在しない

そうかもしれない

でも

これは真実です。

怖い話では決してありません
むしろ、俺は、会えてよかったと思っているから
一瞬だったけど
会えたのだから。

これは回想になる
けれどこれは真実なのだ

8/1、父親が電話で、すこし疲れたような声で俺に言った。

”チエが死んだ”

覚悟していたことだ。6月に会いにいったときからずっと。
それでも、兄弟のいない俺にとっては兄弟を失うことと同じだった。

家に電話すると、母が、、、、泣いていた。
声をかけても、、話すことがうまく出来ないくらいだった。
俺はある種、、、、近いかもしれないとおもっていた。

故郷に戻ると、母親と祖母は何も変わらず笑っていた。
でも......いるはずの場所に、、あいつはいなかった。
帰って来ると出迎えるはずの、、、、
”ん?ああ、、おかえり~”なんて顔して迎えるはずの
あいつはもう、、においすら残さずいなくなっていた。

母親は俺が帰るとこっちにきて、、と廊下へ誘う。
廊下のさきのタンスの上に、、、、、、
茶色い毛と白い毛の混ざった、可愛い老人の
あいつは小さな白い箱に入って俺を待っていてくれた。

あまりに変わりすぎていて涙がでなかった。。。。
”ただいま”笑顔でそういう自分が不思議に思えたほど。

何気なく、、普通に、、時をすごす。
あいつの変わった姿を自然に思えるようになっていく。
”いないこと”が当たり前に思えるようになっていた。

お盆

何事もなく過ぎていく日々。
あいつのお墓のこともあって、忙しい日々。
忙しく過ぎていく。

そして、お盆が終ろうとしていた午前2時過ぎのある夜、
俺は眠い眼をこすりつつ、お風呂へ入ろうと風呂場へ。
階段を下りると、あいつが居た場所が左目に見える。
何事もないのだから怖い気持ちなんてあるわけない。

階段をおりきると同時に左側に、なにか気になるものが、、
花があるけど、色は赤、、、けれど、、あれは、、、、
茶色い、、、毛?
んなわけないだろう?って思って左側へ目をやると

そこには、あいつが立っていた。
首にした包帯もなくなっていた。
”あ、!!チエちゃん!!!”

そう思うより早く、あいつは消えてしまった。
本当に一瞬だけれど、
俺はあいつと会えたのだ。



Last updated December 14, 2004 23:23:08


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